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横田英史の読書コーナー

佐治敬三と開高健 最強のふたり〈上〉〈下〉

北康利、講談社+α文庫

2021.11.5  9:53 am

 サントリー社長・佐治敬三と芥川賞作家・開高健の評伝。筆者によると、当初は佐治敬三の評伝を企画したが、取材を進めるうちに佐治の合わせ鏡のような開高が浮かび上がってきたという。本書では「互いの中に似たものを感じ惹かれ合い、刺激しあって人生をより豊穣なものとした」様子が詳細に描かれる。上下合わせて600ページを超える大著だが読む価値は十分にある。
     
 筆者は、共鳴し合い触発されながら歩んだ両者の友情を描くとともに、佐治についてはビール事業やウイスキー事業にかける思い、開高についてはベトナム戦争における特派員経験や海外での釣行といった無頼派作家の精力的活動の数々を取り上げる。柳原良平や山口瞳を生んだ広報誌「洋酒天国」のエピソードの数々も楽しい。
     
 評者にとっての開高は雑誌「オーパ!」に登場する釣り人のイメージが強く、実は1冊も小説を読んだことがない。本書を読んで、ノーベル文学賞の候補に挙げられたという開高の作品を、2〜3冊読んでみようかという気になった。

書籍情報

佐治敬三と開高健 最強のふたり〈上〉〈下〉

北康利、講談社+α文庫、p.328〈上〉、p.312〈下〉、¥869〈上〉〈下〉

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。