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横田英史の読書コーナー

世界「失敗」製品図鑑〜「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道〜

荒木博行、日経BP

2021.12.3  2:54 pm

 大きな期待を背負って発売した製品や立ち上げたサービスが、予想に反して失敗に終わった20件の事例を紹介した書。それぞれの事例について、製品・サービスの概要、失敗に至った経緯、なぜ失敗したかの分析、失敗から得られる教訓などを示す。教訓はキャッチーで、なるほどと思わせる。
      
 取り上げるのは、アマゾンのファイアフォン、フォードのエドセル、コカ・コーラのニュー・コーク、アップルのニュートン、セブン-イレブン・ジャパンのセブンペイ、セガのドリームキャスト、ソニーのAIBO、ゼネラル・エレクトリックのプレディックスと有名な事例ばかり。エドセルやニュー・コークなど古典的な事例に混じって、比較的新しい失敗例が含まれているのが本書の特徴である。
       
 筆者は、ファイアフォンについては自社が描いた将来像を重視しすぎて失敗、セブンペイは「自社だけが特別」思考に陥って失敗、AIBOは経営陣の事業尺度に合わず失敗、プレディックスは顧客の準備が整わず悪循環に突入して失敗と分析する。一つの事例は15ページほどで完結し、コンパクトにまとまっている。
      
 読後感は、よくも悪くも今どきの書という点。4時間の映画を10分で紹介するような書なので、多くを期待してはいけない。取材はいっさい行わず、公表資料のみで執筆しており、底の浅さとインパクト不足は否めない。肩のこらない書なので、出張のお供や就寝前の読書に向く。

書籍情報

世界「失敗」製品図鑑〜「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道〜

荒木博行、日経BP、p.288、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。