横田英史の読書コーナー
INNOVATION STACK〜だれにも真似できないビジネスを創る〜
ジム・マッケルビー、山形浩生・訳、東洋館出版社
2021.12.31 3:04 pm
スマホやタブレットを使ったモバイル決済代行サービスを手がけるスクア(Square)の共同創業者が綴る起業論。筆者は、自らの経験だけではなく他社の成功例から共通する法則を見出し、「スタートアップ必勝論」を展開する。読む前は、結果オーライの成功物語を予想していたが、読み応えのあるビジネス書に仕上がっている。いかに事業をトランスフォーメーションすべきかに関する気づきを与えてくれる書である。
ビジネスを成功に導くのは、既存の方法では対応できない問題を解決するイノベーション(発明)を積み重ねる「イノベーションスタック」を深くすること。深ければ深いほど、競合他社は真似がしづらくなり優位な立場を築くことができる。例えばスクエアは、使い勝手の良さや加盟無料、安いハード、契約なし、電話サポートなし、など14の発明を積み重ねた。これが競争優位を生み、Amazonの模倣サービスの追撃を振り切ることに成功したという。
スタートアップが成功する秘訣は解決したい課題にすばやく手をつけ、イノベーションにつなげること。一つのイノベーションは、解決したポイントとは別のところに無理や課題を引き起こす。それを解決するために、別のイノベーションが必要になる。こうしてイノベーションを連鎖させ、イノベーションスタックを築く。イノベーションスタックは計画ではなく、生死のかかわる脅威に対する一連の対応というのが筆者の見解である。
筆者は、バンク・オブ・イタリー(後のバンク・オブ・アメリカ)、イケア、サウスウエスト航空のビジネスを分析し、それぞれどのようなイノベーションスタックを構築したかを明らかにする。それぞれ16個、12個、13個の発明を積み重ね、競合優位を築いたとする。
書籍情報
INNOVATION STACK〜だれにも真似できないビジネスを創る〜
ジム・マッケルビー、山形浩生・訳、東洋館出版社、p.320、¥2090