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横田英史の読書コーナー

無形資産が経済を支配する〜資本のない資本主義の正体〜

ジョナサン・ハスケル、スティアン・ウェストレイク、山形浩生、東洋経済新報社

2022.2.18  6:50 pm

 無形投資の増大が生産性や格差の拡大、長期停滞にどのような影響をもたらすのか、企業・投資家・銀行・政府はどのように対応すべきか、無形投資の歴史と実態など、無形資産について多角的に分析した書。日経新聞がビル・ゲイツが推薦した骨太の書と評価していたのも納得できる。原書は2018年発行だが、本書の価値は色あせていない。現在の経済に大きな影響を及ぼす無形投資の仕組みを知る上でお薦めの1冊である。
      
 無形資産の例として挙げるのは、スターバックスの店舗マニュアル、アップルのデザインとソフトウェア、コカ・コーラの製法とブランド、マイクロソフトの研究開発と研修、グーグルのアルゴリズム、ウーバーの運転手ネットワークなどである。
      
 無形資産には、有形資産と異なるの4つの特徴がある。評価したり差し押さえが難しいサンクコスト(埋没費用)、スピルオーバー(波及効果)を作り出す、スケーラブル(拡張可能)で勝者総取りを生む、情報技術と組織プロセスや経営プロセスとのシナジー効果を挙げる、本書を読んで残念のは日本の存在感が希薄なところだが、最後のシナジー効果を活かせない状況を考えると致し方ないかもしれない。

書籍情報

無形資産が経済を支配する〜資本のない資本主義の正体〜

ジョナサン・ハスケル、スティアン・ウェストレイク、山形浩生、東洋経済新報社、p.388、¥3080

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。