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横田英史の読書コーナー

ウクライナを知るための65章

服部倫卓・編著、原田 義也・編著、その他、明石書店

2022.8.9  12:02 pm

 ウクライナについての情報を多角的に提供する入門書。歴史、民族、言語、宗教、地理、芸術、文化、軍事力、軍需産業、EUやNATOへの加盟問題など、ウクライナについて知るべき情報をほぼ網羅している。日本との外交関係や経済関係、ロシアやポーランドとの関係、汚職など抱える問題などについても言及する。本書は2011年に企画がスタートしたものの、紆余曲折の末に出版されたのは2018年。ロシア侵略の歴史的バックグラウンドを知る上で役に立つ1冊である。
      
 本書には、「ヨーロッパ第2の大国」「歴史なき民」「コサックの末裔」など、「そうなんだ」と思わせる記述がいくつも登場し勉強になる。各項目は数ページほどで完結するので、就寝前など空き時間を見つけて細切れで読むのも良い。ロシアの侵略で情報ニーズが急上昇しているウクライナだが、よくまとまっている本書は必読の1冊だろう。
      
 30人を超える執筆陣は実に多彩である。大学教授、高校教師、厚労省の職員などのほか、「物語 ウクライナの歴史」の著者で元ウクライナ大使の黒井祐治、ロシアの侵略以来引っ張りだこの小泉悠も加わっている。掲載する写真に執筆陣の手によるものを基本的に使うなど手作り感にも好感が持てる。

書籍情報

ウクライナを知るための65章

服部倫卓・編著、原田 義也・編著、その他、明石書店、p.416、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。