横田英史の読書コーナー
生命機械が未来を変える〜次に来るテクノロジー革命「コンバージェンス2.0」の衝撃〜
スーザン・ホックフィールド、久保尚子・訳、インターシフト
2022.8.31 5:47 pm
マサチューセッツ工科大学(MIT)が研究している、生命の仕組みを工学に生かす取り組みを解説した書。バッテリーを作る遺伝子操作したウイルス、水を浄化するアクアポリンタンパク質、がん細胞の早期発見と効果的な治療に使えるナノ粒子、脳を増強し身体の動きを取り戻す義肢、食料危機を乗り越える「高速フェノタイピング」など、刺激的で興味深い事例が並ぶ。
例えばアクアポリンタンパク質を使うことで、水の分子を1個ずつ通過させるフィルタを作ることができる。その数は1秒間に30億個に上るという。ナノ粒子の活用も面白い。体内の特定の組織まで造影剤を運べるので、画像処理を使った診断に比べ、20分の1の大きさの腫瘍も検出可能となる。
筆者は、女性として初めてMITの学長(現・名誉学長)となった生物学者。タイトルの「コンバージェンス2.0」は生物学と工学の融合を意味する。「コンバージェンス1.0」は物理学と工学の融合で、量子力学や放射線の発見などが産業(工業)の発展につながった。同様なことが生物学と工学との融合で生じると説く。軽いタッチの書き口で読みやすい。知的好奇心を満たしてくれるお薦めの1冊である。
書籍情報
生命機械が未来を変える〜次に来るテクノロジー革命「コンバージェンス2.0」の衝撃〜
スーザン・ホックフィールド、久保尚子・訳、インターシフト、p.264、¥2530
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
新着記事
-
EdgeTech+2024 AWARD発表、エッジ、AI、オートモーティブ分野で優秀技術を選出
2024.11.15 11:54 am
-
ヴィクトリア朝時代のインターネット
2024.6.23 8:48 am
-
ヨーロッパ史 〜拡大と統合の力学〜
2024.6.20 8:46 am
-
脳科学で解く心の病 〜うつ病・認知症・依存症から芸術と創造性まで〜
2024.6.15 8:44 am
-
仕事と人間(上)〜70万年のグローバル労働史〜
2024.6.11 8:42 am
-
結婚の社会学
2024.6.6 8:41 am
-
日ソ戦争 〜帝国日本最後の戦い〜
2024.5.31 8:39 am
-
世界は経営でできている
2024.5.24 8:37 am
SOLUTION
REPORT
横田英史の 読書コーナー
お薦めセミナー・イベント情報
ET/IoT Technology Show
Back Number
Pick Up Site
運営
株式会社ピーアンドピービューロゥ
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-22
メゾン・ド・シャルー3F
TEL. 03-3261-8981
FAX. 03-3261-8983