横田英史の読書コーナー
人口大逆転〜高齢化、インフレの再来、不平等の縮小〜
チャールズ・グッドハート、マノジ・プラダン、澁谷浩・訳、日経BP
2022.10.22 10:30 am
人口構成とグローバル化(特に中国の参入)、労働節約型のイノベーションがディスインフレーションを生んできたが、それが逆転し始めインフレと高金利の時代がやってくると主張した書。1〜5年ほどたてば転換点が見えてくるとする(本書は2019年に執筆)。新型コロナや中国のゼロコロナ政策、ロシアによるウクライナ侵略といった想定外によってインフレと高金利の時期が少々前倒しになった格好だが、本書の分析は的確である。ちなみに新型コロナの影響に関する追記の章を設けて論考を補っている。
人口構成に関しては、高齢化と出生率の低下が、供給減と需要の増加につながる。労働力不足は賃金の上昇につながり、これもインフレ圧力となる。認知症になる老人の増加や介護のコストは、財政政策や年金システム、家計貯蓄に大きなインパクトを与え、国家財政の負担が増え、金利上昇につながる。
中国は自由貿易市場の参入によって、安い労働力の供給源となりインフレを抑制する役割を担った。しかし、この前提も今後は崩れる。インドは政治体制や社会構造を考えると、中国の代わりにはならないとする。このほか、日本の状況がなぜ西欧諸国と異なるのかについて、1章を割いて解説する。ここを読むだけでも価値がある。今後の経済状況を理解する上で役立つ書でお薦めである。
書籍情報
人口大逆転〜高齢化、インフレの再来、不平等の縮小〜
チャールズ・グッドハート、マノジ・プラダン、澁谷浩・訳、日経BP、p.376、¥3300
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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