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横田英史の読書コーナー

ザ・パターン・シーカー〜自閉症がいかに人類の発明を促したか〜

サイモン・バロン=コーエン、篠田里佐・訳、化学同人

2023.2.3  11:21 am

 自閉症についての理解を深めることのできる書。エジソンをはじめとして自閉症の人々が発明や発見によって人類の進歩に寄与した事例を紹介する。筆者は英国の心理学者・精神医学者でケンブリッジ大学の自閉症研究センター長を務める人物。牽強付会と感じる部分もあるが、具体的事例や脳医学の知見を含め幅広い視野で自閉症について解説しており役立ち感がある。
     
 脳には2つのメカニズムがあるとする。完全なシステム化メカニズムと完全な共感回路である。前者は「もしならば(if-and-then)」パターンの識別に特異な能力につながり、この傾向が強く出ると自閉症につながる可能性が高まるという。同時に人間のif-and-thenを探る能力が、ホモ・サピエンスが地球を支配できた原動力になったとする。技術者と自閉症の関係にも踏み込む。STEM(科学・技術・工学・数学)分野に貢献している人材は、一般人よりも自閉症の子供を授かる可能性が高いとデータに基づき論じる。
     
 社会に利益をもたらすだけではなく、雇用が自閉症者の精神衛生状態を大きく完全させるので、自閉症の人々の支援を整備した雇用枠を拡大すべきだと説く。自閉症者の斬新なアイデアは、周囲のサポートがあってこそイノベーションになりうると強調する。

書籍情報

ザ・パターン・シーカー〜自閉症がいかに人類の発明を促したか〜

サイモン・バロン=コーエン、篠田里佐・訳、化学同人、p.320、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。