横田英史の読書コーナー
解像度を上げる〜曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法〜
馬田隆明、英治出版
2023.2.27 1:50 pm
起業が成功するためには、事業計画の“解像度”を高めるとともに、まず行動すべきと説いた書。解像度を高めるためのポイントをわかりやすく解説する。ビジネスモデルを練るときには、十分に深堀りするとともに、議論の間口を広くとり、構造化し、時間軸にそって議論を行うべきだと、経験に基づき持論を展開する。論旨が明快で構造化された文章は非常に読みやすい。ポイントとなる箇所には傍線が引かれており、後で振り返るときに役に立つ。スタートアップに限らず、新規事業を考えるときにも有用な内容になっている。
「深さ」が足りないのが、スタートアップで特によくあるパターンだという。詰めが甘く、掘り下げ不足の原因は、現場に足を運ばないところにあるというのが筆者の見立てである。筆者は、「深さ・広さ・構造・時間」の視点とともに、まず行動することの重要さも強調する。このほか言語化することの重要性を説くが納得である。言語化することによって、曖昧なところをあぶり出し、深みを増すことができるのは確かである。
筆者は、東京大学卒業生向けの起業支援を行っているFoundXのディレクターで、スタートアップ支援だけではなくアントレプレナーシップ教育に従事している。本書は筆者が講演で使っているスライドを書籍化したもの。繰り返しが気になるところもあるが、重要な点を強調しているとも言え教科書としては悪くない。
書籍情報
解像度を上げる〜曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法〜
馬田隆明、英治出版、p.352、¥2420
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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