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横田英史の読書コーナー

励ます禅語〜「茶禅一味」の境地に学ぶ

金嶽宗信、東洋経済新報社

2023.5.17  12:54 am

 日経ビジネスに掲載された短い書評を読んで購入した禅語の解説書。一つの禅語に4ページを割き、一般的な解説だけではなく、著者の体験談と自らの解釈を付け加える。著者のエピソードはなかなか面白く、読み物として楽しめる。筆者は京都の大徳寺で修行をして、現在は広尾の禅寺の和尚を務める人物。凄さはないが、身近さを感じる書き口である。評者の知っている禅語は一つも登場しないが、500年以上も語り継がれてきただけに、いずれも奥深くて味わいがある。
      
 本書は禅語を8つに分けて解説する。例えば「自由自在に生きるとは」「理想を手放さない」「明日の心配を、今日しない」「気配りで、うまくいく余計なことをやってる場合じゃない」「バランスはいつでもむずかしい」といった具合である。例えば「バランスはいつでもむずかしい」では、碧澗泉水清(へきかんのいずみ みずきよし)を取り上げ、解説とともに「慈悲」や「涙活」へと話題を広げる。
     
 本書は、集中して一挙に読み通すよりも、一つの禅語を選んで毎日少しずつ読み進むのがふさわしい。評者は寝る前に読んで、心安らかに眠りにつくのを日課にした。もともと恐ろしく寝付きが良いので効果のほどは不明だが、少なくとも悪くはならなかった。

書籍情報

励ます禅語〜「茶禅一味」の境地に学ぶ

金嶽宗信、東洋経済新報社、p.248、¥1650

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。