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横田英史の読書コーナー

論点・日本史学

岩城卓二、上島享、河西秀哉、ミネルヴァ書房

2023.7.7  8:25 pm

 日本史研究で論点になっている事項を網羅的に紹介した書。日本史を古代史、中世史、近代史、現代史に分け、154件の論点を示す。読者に評価を押し付けることなく、最新の研究を含め“素材”“諸説”を示すことに専念する。「こんな出来事も評価が定まっていないんだ」「こんな見方もあるんだ」と、教科書とは違う楽しみ方ができる。日本史への興味が湧く書で、多くの方にお薦めである。
     
 A4判と大きく、紙質が良いこともあってけっこう重いので、持ち運びに難がある。出勤時や出張時に読むのには向かない。本書は一つの論点を見開き2ページで示しているので、寝る前に1件ずつ読む進むといった方法が良さそうだ。1件あたりの文章も、A4判と大きいこともあり分量的にも適度なのでお勧めの読み方である。
     
 本書のカバー範囲は広い。古代史では、縄文時代や弥生時代、邪馬台国といった定番を含め、国家仏教と行基、木簡から見える古代の日本、武士論といった話題をカバーする。中世史で取り上げるのは、平安後期・鎌倉期の僧侶のネットワーク、鎌倉期・南北朝期の朝廷と公家社会、室町期の荘園制、中世の身分制と差別、中世城館の機能と特質、中世の「家」と女性、などである。近世史では、村と百姓、江戸幕府による朝廷の位置づけ、江戸の町人社会、被差別身分、女性の役割などをカバーする。近現代史では、「武士」の近代、下層社会と貧困、アイヌと沖縄人の近代、ジェンダーと近現代、原子力と核、在日コリアン、公文書と近現代史研究と現代に通じる話題がぐっと増えてくる。

書籍情報

論点・日本史学

岩城卓二、上島享、河西秀哉、ミネルヴァ書房、p.388、¥3960

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。