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横田英史の読書コーナー

BUILD〜真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック〜

2023.7.31  7:38 am

 伝説のベンチャー米General Magicでエンジニアとしての第一歩を踏み出し、米AppleでiPodとiPhoneの開発に携わった後、AI搭載のスマートサーモスタットの米Nestを立ち上げた筆者が、自らの体験に基づき「ものづくりとマネジメントの要諦」を披露した書。筆者はNestを米Googleに売却後は、投資・経営アドバイス会社を立ち上げている。本書には製品企画上や経営上の数々の失敗談やそこから得た教訓が随所に述べられている。内容は具体的で、製品企画担当者や起業家にとって貴重なアドバイスが詰まった書である。
       
 本書では懐かしい名前が次々に登場する。まずGeneral Magic社。LisaとMacintoshを開発したBill Atkinsonが立ち上げた会社で、エージェント技術や携帯端末の開発を手掛けた。松下電器産業やNTT、ソニーなどが出資したこともあり、日経エレクトロニクスでも盛んに取り上げたが、アイデアに当時の技術が追いつかず結局は破綻した。オランダのPhilipsに転職後に開発したのがハンドヘルドパソコンのVeloとNino。いま思い返すと画期的な製品だがビジネス的には成功しなかった。
       
 失敗の経験で培われたのが「ものづくり観」である。技術が素晴らしいからといって成功にはつながらない。なぜ買う必要があるのか、なぜ使う必要があるのか、なぜ使い続ける必要があるのかといった、ユーザーの「なぜ」に的確に答える製品でないと成功は覚束ない。開発、マーケティング、サポートを連携して、顧客のカスタマージャーニーに寄り添わなければならないと強調する。

書籍情報

BUILD〜真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック〜

、p.、¥

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。