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横田英史の読書コーナー

なぜAppleは強いのか〜製品分解からわかる真の技術力〜

清水 洋治、技術評論社

2023.10.5  1:46 pm

 iPhoneやApple Watch、Macintoshなど米アップル社の歴代製品を分解・分析して、技術力の核心に迫った書。製品の筐体を開け部品の配置と実装を確認し、半導体はパッケージをモールドを剥がし開封してダイ(チップ)を解析する。ダイの顕微鏡写真がふんだんに掲載されており、マイクロプロセッサのダイフォトが好物だった評者にはたまらない1冊である。製品ごと部品表や仕様だけではなく、一覧表もあるので技術の変遷を知ることができる。ハードウエア技術者にとって貴重な情報が詰まった1冊でお薦めである。
     
 冒頭で示した製品以外にもイヤホンのAirPods、スマートスピーカーのHome Pod、忘れ物追跡デバイスのAirTagを対象にする。iPhone 14 ProとA16 Bionicプロセッサ、Apple Watch Series 8、Air Pods Proなど2022年現在で最新の製品については、さらに詳細な分析・解析を行う。アップル社は、Wi-FiやUWB、Bluetoothなど通信LSIまでも自前で開発しており、いまや立派な通信用半導体メーカーにてることを筆者は明らかにする。
     
 筆者は写真に“物を言わせる”方針を貫き、文書は簡単な説明にとどまる。おかげで遠距離通勤をされている方なら、自宅から会社までの往復で読み終えることも可能だ。残念なのはあまりに簡潔すぎて、意味を取りづらい部分が散見するところ。用語の統一が不十分なところを含め、もう少し読者に配慮すべきだっただろう。

書籍情報

なぜAppleは強いのか〜製品分解からわかる真の技術力〜

清水 洋治、技術評論社、p.256、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。