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横田英史の読書コーナー

インド〜グローバル・サウスの超大国〜

2023.10.30  2:02 pm

 中国を抜き世界最大の人口を抱え、GDPは英国を抜いて5位で、2026年には日本を抜くといわれるインドについての入門書。歴史、文化、社会、政治、外交などをバランスよくまとめている。インドの強さと弱さがよく分かる。モディ首相やモディ政権に関する解説は役立ち感がある。筆者は30年以上にわたってインドを調査研究している国際基督教大学 上級准教授。筆者の知見がぎっしりと詰まった、お薦めの1冊である。
     
 インドは世界最大の民主主義国である。民主主義とは一線を画す新興国や発展途上国が増えるなかで存在感を強めている。米国や中国、ロシアに偏らない中立外交で、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国のリーダーと目される存在である。紛争を抱える中国との関係を、台湾問題を絡めて解説する箇所は読み応えがある。アフガニスタン、バングラデシュ、パキスタンとの関係についての解説も勉強になる。
     
 一方で汚職、環境問題(大気汚染/水質汚染)、貧困、カースト制度、宗教間格差、女性の社会進出の遅れなど多くの問題を抱える。筆者は手際よくこうした問題の背景や歴史、現状を手際よくまとめる。IT産業で知られるインドだが、産業についてはサービス業が主流で、製造業の弱さを問題点として挙げる。日本とインドとの関係で最も遅れているのは、日中の1/20以下に過ぎない人的交流だと断じる。本書を読むと、いかにインドについて分かっていないかを痛感する。

書籍情報

インド〜グローバル・サウスの超大国〜

、p.、¥

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。