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横田英史の読書コーナー

冷戦史(下)〜ベトナム戦争からソ連崩壊まで〜

青野利彦、中公新書

2024.1.24  2:09 pm

 冷戦開始から終焉までの流れを俯瞰して知ることができ、歴史の面白さを感じさせてくれる書。米国、ソ連、欧州だけではなく、アジアの動きも視野に入れる。下巻は、泥沼化するベトナム戦争、60年代末から70年代前半のデタント(緊張緩和)、70年代後半からの新冷戦への展開、ゴルバチョフの登場、ベルリンの壁の崩壊、冷戦の終結までをカバーする。本書を読むと、ロシアのウクライナ侵攻、9.11同時多発テロ、北朝鮮の核開発など、現在起こっている危機の数々が冷戦と深く関係していることがよく分かる。
       
 本書を読むと、欧州と東アジアの事態がしばしば連動することが分かる。例えば、西ドイツの東方政策にヒントを得て韓国は北朝鮮に対話を呼びかけ、天安門における中国の対応がゴルバチョフの東欧政策に影響を与えた。
       
 歴史の“もし”も興味深い。ゴルバチョフとミッテランらが求めていた、ソ連が参加し東西ヨーロッパ全体を包含するような安全保障秩序が確立していれば、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった可能性が高い。日ソや日朝、米朝の関係を好転させるチャンスが存在した。例えば、ソ連が北方領土の2島返還を決定したにもかかわらず、日本政府が好機を逃した。上下2巻で500ページを超えるが、歴史好き以外の方にもお薦めできる。

書籍情報

冷戦史(下)〜ベトナム戦争からソ連崩壊まで〜

青野利彦、中公新書、p.256、¥968

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。