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横田英史の読書コーナー

意識の脳科学〜「デジタル不老不死」の扉を開く〜

渡辺正峰、講談社現代新書

2024.7.1  10:33 am

 神経科学者の東大准教授が、「デジタル不老不死」の方策を探る自らの研究を紹介した書。生身(なまみ)人間の脳に記憶された情報をデジタル情報として体外のコンピュータにアップロード(記憶の転送)することで、「意識の解明」と「不老不死の実現」を目指す。かなり突飛で驚きの研究だが、それだけに面白い。イーロン・マスクのNeuralinkをはじめとするBMI(Brain Machine Interface)や、意識がどこでどのように生まれるのかといった最新の脳科学の知見なども紹介しており楽しく読み進むことができる。
     
 新型のブレインインタフェースを用いて脳半球と機械半球(コンピュータ)をつなぐ。機械半球の人工神経網に意識を移し替えることで、意識の在り処と仕組みを解明する。意識をアップロードした後には、現実世界と見紛う世界が待っているという。このほか生成AIの波が意識の哲学の世界にも押し寄せているというエピソードや量子脳理論も興味深い。脳科学やBMIに興味のある方にお薦めの1冊である。

書籍情報

意識の脳科学〜「デジタル不老不死」の扉を開く〜

渡辺正峰、講談社現代新書、p.392、¥1320

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。