横田英史の読書コーナー
センスの哲学
千葉雅也、文藝春秋
2024.7.7 10:34 am
帯には「センスの良くなる本」とあるが、芸術の見方や芸術の評価の仕方を哲学的に考察した書。筆者は、ものごとをリズムとして捉えることがセンスだと主張する。一定の反復とそれに対する差異がリズムの面白さであり、それがある程度のばらつきで配置されると「センスが良い」ものになるという。哲学者という人種は、面白い見方をするものだと感心する。凝り固まった自らの頭をほぐすのに向く書である。
筆者は、「センスとは直感的に分かること」「センスとは直感的で統合的な判断力」と定義する。無意識こそがセンスを豊かにし、無自覚な状態が重要だと説く。意識的すぎるモノ選びや作品はなにか足りない感じを生むと論じる。筆者は、意味や目的から離れて、ものごとをリズムで捉えることが肝要だと主張し、モノを見る時の「ある感覚」を養う方法を伝授する。
本書には芸術論としての趣もあり、芸術と生活をつなげる方法、センスを活性化する方法などを筆者は紹介する。本書を読むだけでセンスが良くなるとは思えないが、哲学者とは「こういう風にモノを見る」のだと言うことが少なくとも分かる。
書籍情報
センスの哲学
千葉雅也、文藝春秋、p.256、¥1760
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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