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横田英史の読書コーナー

台湾のデモクラシー〜メディア、選挙、アメリカ〜

渡辺将人、中公新書

2024.7.13  10:38 am

 台湾の民主主義の歴史、現状、弱点、将来、メディアの在り方などを解説した書。米国から帰国した留学生の影響、中国からの圧力を抱えるなかでの民主主義の在り方、選挙を民主主義を守るソフトパワーとして用いる“したたかさ”などを紹介する。白熱する選挙キャンペーンの特徴、多様な言語と文化の複雑さ、2重国籍を認めていた背景など、寡聞にして知らなかった内容が豊富で役立ち感があった。
       
 台湾では国民党による権威主義体制が長く続いたが、李登輝のもとでの総統の直接選挙(1996年)、国民党から民進党への政権交代(2000年)が実現した。統治能力のある代替政党が存在する台湾は、今や「民主主義指数」でアジア首位に立つ。台湾の学生と市民が2014年3月18日に立法院(日本の国会議事堂)を占拠した「ひまわり学生運動」への言及が少なかったところは少々意外だった。
       
 Computexで「日本のIoTの現状」について2回講演したり、家族旅行で訪れたりと、台湾好きな評者だが、いかに台湾の民主主義に知らないかを思い知らされる。台湾の地政学的な立場やTSMCといった視点とは別の角度で台湾を知ることができる書でお薦めである。

書籍情報

台湾のデモクラシー〜メディア、選挙、アメリカ〜

渡辺将人、中公新書、p.344、¥1188

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。