Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

哲学史入門 Ⅰ:古代ギリシアからルネサンスまで

千葉雅也、納富信留、山内志朗、伊藤博明、斎藤哲也・編、NHK出版新書

2024.7.24  10:42 am

 哲学関連の書籍が人気である。実際、西洋哲学史を全3巻で概説る本シリーズは、いずれも丸善 丸の内本店や東京大学生協書籍部でベストセラー入りしている。第1巻である本書は、古代ギリシアからルネサンスまでをカバーする。哲学はいかに誕生し、受け継がれていったかを紹介する。「哲学史をいかに学ぶか」に始まり、哲学の起源としての古代ギリシア・ローマの哲学、哲学と神学の結びつき(中世哲学)、ルネサンス哲学へと議論を展開する。
       
 本書はタイトルの通りの入門書だが、製品企画にひと捻り入れているところに特徴がある。読者目線の人文ライターの質問に対して、東京大学教授や慶應義塾大学名誉教授といった第一線の哲学者が答える対話形式をとることで、読み手の敷居をぐっと下げる。この書評で取り上げた「センスの哲学」の著者・立命館大教授の千葉雅也も冒頭に登場する。
       
 いずれにせよ、哲学者の書き下ろしによる入門書と比較して、取っつきやすいのは間違いない。ただし理解しやすいかどうかは別である。ある程度の予備知識がないと、本書を読みこなすのは容易ではない。人文ライターの質問は分かりやすいので話の流れには乗れるが、腹落ちするレベルにはなかなか到達しない。哲学の初学者よりも、学び直しをしたい方に向く書である。

書籍情報

哲学史入門 Ⅰ:古代ギリシアからルネサンスまで

千葉雅也、納富信留、山内志朗、伊藤博明、斎藤哲也・編、NHK出版新書、p.248、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。