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横田英史の読書コーナー

最新図解 鉄道の科学〜車両・線路・運用のメカニズム〜

ブルーバックス、川辺謙一

2024.8.11  11:30 am

 ブルーバックスで3冊目となる「鉄道の科学」。鉄道のサイエンスに対するニーズの高さが分かる。本書は交通技術ライターが、鉄道の歴史、用いられている技術、運用の仕組み、MaaSなど将来の鉄道像などを、豊富な図と表を使い解説する。刮目に値する内容がある訳ではないが、広いカバー範囲を手際よくまとめている点は評価できる。評者のような「乗り鉄」が十分に楽しめる内容に仕上がっている。鉄道好きにお薦めの1冊である。
      
 本書がカバーするのは、車両や線路、運用のメカニズムほか、新幹線などの高速鉄道、LRT(Light Rail Transit)などの都市鉄道、山岳鉄道と幅広い。例えば車両については構造、動力、座席、ドア、台車、ブレーキ、外形寸法のほか、乗り心地を良くする工夫やカーブを高速に通過する工夫などに言及する。バラエティに富む。将来の鉄道像では、MaaSのほか蓄電池電車、水素エンジン電車、燃料電池電車について触れる。
       
 実は評者が新卒で配属されたのは、神戸新交通を手がけた部署だった。世界初の自動無人運転方式を採用したこともあり、制御の精度を高めた。その結果、実運用では想定外の誤差が発生し、開通時にトラブルが続いてしまった苦労話をよく聞かされた。本書はその神戸新交通の話をきちんと取り上げているのが嬉しい。

書籍情報

最新図解 鉄道の科学〜車両・線路・運用のメカニズム〜

ブルーバックス、川辺謙一、p.296、¥1210

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。