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横田英史の読書コーナー

プレイステーションの舞台裏〜元CTOが語る創造の16年〜

茶谷公之、アマゾン

2024.9.23  11:45 am

 初代プレイステーション事業の立ち上げに参画し、ソニー・コンピュータエンタテインメントのCTOを務めた筆者によるプレステ開発の回顧録。初代プレイステーションに始まる16年の歩みを、自らの体験に基づき振り返る。黎明期らしい苦労話がてんこ盛りである。タイトル通り舞台裏を詳述しており、興味深く読める。筆者は初代プレイステーションのあとも、プレイステーション4までの構想・開発・事業運営に関わっており、生き字引的な存在である。
      
 ソニー・ホンダモビリティ代表取締役の川西泉氏やソニーセミコンダクタソリューションズCEOの清水照士氏など、今は別の領域で活躍している方々の昔の姿を知ることができるのも本書の楽しみ方の一つである。米AMD CEOのリサ・スーが、プレイステーション3に搭載したCellプロセッサ開発時に米IBMのカウンターパートだったという話も出てくる。かつて話題を呼んだ米ジェネラルマジックやソニーの手書きコンピュータ「PalmTop」なども登場し、当時を知る人間にとって懐かしさ満載の書である。ちなみに評者は初代プレイステーションの記者発表に出席し、CPUボードを見せるように求めたが拒否された思い出がある。
      
 残念なのは繰り返しが多かったり、話があっちこっちに飛んで読みづらい点である。編集者の手を入れるべきだっただろう。貴重な内容を含む書だけにもうひと手間欲しかった。ちなみに本書評の執筆時点では、アマゾン経由でのみ購入できる。

書籍情報

プレイステーションの舞台裏〜元CTOが語る創造の16年〜

茶谷公之、アマゾン、p.177、¥2000

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。