横田英史の読書コーナー
細胞(上)〜生命と医療の本質を探る〜
シッダールタ・ムカジー、田中文・訳、早川書房
2024.10.27 11:58 am
細胞研究の年代記。ロバート・フックが存在に気づいた1660年代から現代に至るまでをカバーする。生命の不思議や巧妙な仕組みを論じる刺激的な内容である。この書評で紹介した『遺伝子』や『がん』などの著書がある、細胞生物学者の最新刊。上下2巻で全部で600ページを超える大著だが、翻訳が良いこともあってスイスイ読み進むことができる。冒頭に挿入された歴史的な写真の数々もとても良い。圧巻のスケールで知的好奇心を満たすことができるお薦めの1冊である。
筆者は、細胞という概念や細胞生理学についての知識が、医学や科学、生物学、社会構造、文化をいかに変えたかを詳細に綴る。例えば細胞生物学は、医学に4つの変革をもたらした。第1は、細胞の性質を変えための薬や化学物質、身体的な刺激の利用。抗生物質や化学療法、免疫療法などが該当する。第2は、輸血や骨髄移植、体外受精といった身体から身体への細胞を移す技術。第3は、インスリンや抗生物質などの、物質を合成するために細胞を使うこと。第4は、細胞の遺伝子を改変してから細胞移植を行い、新たな性質を持つ細胞や臓器を作り出す。
著者によると、今や「遺伝子の世紀から細胞の世紀へと移行しつつある」という。例えばヒトの不妊治療として開発された技術が、今ではヒトの脆弱性(先天的な異常など)を治す治療として使われようとしている。病気を治すためや人間の能力を増強するための、胚の選択やヒトの胚の遺伝的な操作である。
書籍情報
細胞(上)〜生命と医療の本質を探る〜
シッダールタ・ムカジー、田中文・訳、早川書房、p.336、¥2750

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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