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横田英史の読書コーナー

私たちは売りたくない!〜”危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭〜

チームK、方丈社

2024.11.20  12:09 pm

 新型コロナワクチンを販売するMeiji Seikaファルマの現役MR(医薬情報担当者)有志が、自社の販売するレプリコンワクチンの危険性を告発した書。コロナワクチン接種後に同僚が死亡したのをキッカケに本書の執筆・出版に至った。レプリコンワクチンは安全性の検証が十分になされておらず、さらには厚労省の施策が医療業界の常識を大きく逸脱していると指摘する。反ワクチンと聞くと陰謀論を思い浮かべてしまう。筆者は、厚生労働省などの公表データに基づいて執筆しており陰謀論とは一線を画すと主張する。
      
 問題となっているワクチンは、新型コロナ向けのレプリコンワクチン(自己増幅型ワクチン)。新しいタイプのmRNAワクチンで、mRNAを体内で長期間にわたって作り続ける特徴がある。ワクチンの効果の持続性が高まり、接種回数を減らせる。一方で、ワクチンに由来する“何か”が排出され、それが未接種者に伝播することで身体的に悪影響を与える「シェディング」を指摘する向きもある。
      
 こうしたなか、日本看護倫理学会が8月23日付で「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念」と題する緊急声明を発表したり、美容院や医療機関、ホテルなどが「レプリコン接種者 お断り」とするなど、一部で社会問題化している。一方で、日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会が、10月17日付でコスタイベのシェディングの可能性を否定する表明を出した。
      
 mRNAワクチンが新しい技術である上に生物学的な話も加わり、なんとも白黒をつけがたい(たぶん、いつまで経っても灰色)。情報が錯綜しているなか、新しい技術であるレプリコンワクチンについて頭を整理する意味では読んでおくのも悪くない。

書籍情報

私たちは売りたくない!〜”危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭〜

チームK、方丈社、p.240、¥1760

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。