横田英史の読書コーナー
〈弱いロボット〉から考える〜人・社会・生きること〜
岡田 美智男、岩波ジュニア新書
2024.11.29 12:15 pm
完全無欠ではなく、周囲の助けに支えられながら所望の目的を果たすロボットの設計思想を紹介した書。技術者はつい完璧を求める。95%の精度を99%に高めることに必死になったり、より速く、より小さく、より軽くを追求しがちである。筆者が目指す「弱いロボット」は、こうした設計思想とは一線を画しており、とても興味深い。こんな考え方も悪くないと思わせる。岩波ジュニア新書の1冊だが、シニアにも十分に役立つ発想法を紹介しておりお薦めである。
筆者が目指すのはロボットのミニマルデザインである。余計なものを削ぎ落とし、人間との豊かな関係性のなかで生きるソーシャルなロボットを構成するために必要最小限な要素だけを残す。必ずしも生き物の姿に似せる必要はないし、精緻なロボットを考える必要もない。作り込みを最小限にし、周りに支えてもらう。結果として“しなやか”になり、レジリエントなロボットが実現できるという。
本書は数々の「弱いロボット」を紹介する。最初に登場するのがゴミを拾わない「ゴミ箱ロボット」である。周囲の人の手を借りてゴミを収集する。デザインでゴミ箱であることを表しつつ、挙動によって周囲の人にゴミ箱を投げ入れることを促す。
書籍情報
〈弱いロボット〉から考える〜人・社会・生きること〜
岡田 美智男、岩波ジュニア新書、p.224、¥1089
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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