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横田英史の読書コーナー

地面師〜他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団〜

森功、講談社文庫

2024.12.30  1:18 pm

 2024年に話題となったNetflixの「地面師たち」の元ネタになったと言われる書。地面師事件とは、地主になりすまして不動産業者から土地代金を騙し取る詐欺を指す。「地面師たち」は積水ハウスが55億5000万円を騙し取られた事件を取り上げた映画だが、本書はいくつもの地面師事件を俎上に載せ、経緯と関係者、警察の捜査などについて詳細に紹介する。あまりに複雑怪奇すぎて、油断すると事件の構図が理解できなくなってしまうほどだ。Netflixの「地面師たち」を見た方も見ていない方にも、エンターテインメントとしてお薦めの1冊である。
     
 手練れのノンフィクション作家である筆者は、積水ハウス事件以外に、白骨死体で発見された新橋の女性地主の事件、溜池の駐車場でアパホテルが騙された事件、なりすましの台湾華僑が登場する富ヶ谷事件、荒れ果てた500坪の邸宅を舞台にした事件などを取り上げる。不動産業者やマンションデベロッパー、ブローカー、司法書士、弁護士といった一癖も二癖もある魑魅魍魎が繰り広げる土地取引詐欺の舞台裏を詳述する。
      
 手練れのノンフィクション作家である筆者は、被害額が大きい割に報道の扱いが小さく、テレビなどでほとんど取り上げられず一般人に馴染みが薄い理由にも言及する。地面師事件の被害者がマスコミの広告スポンサーである大手の住宅メーカーやデベロッパーであるケースが少なくないことが原因だという。

書籍情報

地面師〜他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団〜

森功、講談社文庫、p.256、¥726

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。