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マイクロンが世界初の176層NANDを出荷開始、フラッシュメモリに画期的なパフォーマンスと高密度を実現

2020.11.11  3:13 pm

最先端の3D NANDが、モバイル、車載、クライアント、データセンターの用途におけるストレージ能力を強化

(アイダホ州ボイシ、2020年11月9日)
Micron Technology, Inc.は本日、史上最高の密度とパフォーマンスを他社に先駆けて達成した、世界初の176層3D NANDフラッシュメモリの出荷開始を発表しました。大きな飛躍を遂げたマイクロンの新しい176層技術と最先端のアーキテクチャにより、データセンター、インテリジェントエッジ、モバイルデバイスなど、ストレージが活用されるあらゆる用途において、アプリケーションのパフォーマンスが大幅に向上します。
  
マイクロンのテクノロジー製品グループのエグゼクティブバイスプレジデントであるスコット・デボアは次のように述べています。
「マイクロンの176層NANDは、積層数で最も近い競合製品を40%ほど上回り、業界に新基準をもたらします。今回の多層化技術と、CMOSアンダーアレイアーキテクチャとの組み合わせにより、マイクロンは今後も業界トップクラスのコスト効率を維持できるでしょう」
  
マイクロンの176層NANDは、マイクロンの第5世代3D NANDおよび第2世代のリプレースメントゲートアーキテクチャという、現在市場で最先端の世代のNANDノードを採用しています。前世代の3D NANDと比較して、読み書きのレイテンシが35%以上改善され、アプリケーションのパフォーマンスが劇的に向上ていします。また、クラス最高の競合製品と比較してダイサイズを30%小型化したコンパクト設計で、スモールフォームファクタを使用するソリューションに最適です。
  

画期的なテクノロジーにより、さらに幅広い用途でフラッシュストレージの力を活用
マイクロンのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高事業責任者、スミット・サダナは次のように述べています。
「マイクロンの176層NANDは、お客様の製品に画期的なイノベーションをもたらす技術です。当社では、幅広い製品ポートフォリオにこの技術を投入し、NANDを使用するあらゆる場所に価値をもたらします。とりわけ、5G、AI、クラウド、インテリジェントエッジなど成長が著しい分野での展開を目指しています」
  
高い汎用性と圧倒的なメモリ密度を備えたマイクロンの176層NANDは、モバイルストレージ、自律システム、車載インフォテインメント、クライアントおよびデータセンター向けのSSDなどの幅広い分野で、技術者にとって強力な武器となることでしょう。
  
マイクロンの176層NANDでは、データセンター向けSSDの重大な設計基準であるサービス品質(QoS(1))が改善されています(2)。これにより、データレーク、人工知能(AI)エンジン、ビッグデータ解析などのデータ集約型の環境やワークロードの高速化が可能になります。また、5Gスマートフォンでは、QoSの向上により、アプリの起動や切換えが高速化するだけでなく、モバイルデバイスの使用感がさらにシームレスで応答性に優れたものになり、低レイテンシな5Gネットワークを存分に活用した真のマルチタスクが可能になります。
  
(1)サービス品質(QoS)とは、SSDレスポンスタイムの整合性と予測可能性のことです。
(2)QoSの改善は、マイクロンの前世代のNANDと比較して、ブロックサイズを59%縮小、読み取りレイテンシの不安定さを48%軽減したことで達成されています。
マイクロンの第5世代3D NANDでは、Open NAND Flash Interface(ONFI)バスでの最大データ転送速度が業界をリードする毎秒1,600メガトランスファー(MT/s)となり、前世代よりも33%改善されています(3)。ONFI速度が増したことにより、システムの起動が高速化し、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。車載用途では、この速度によりエンジンスタートとほぼ同時に車載システムが使用できるようになるため、ユーザーエクスペリエンスが向上します。
(3)業界全体で見た前世代の最大スループットと比較。

  
マイクロンは業界の開発者とも緊密に連携することで、新製品をソリューションに迅速に統合しています。マイクロンの176層NANDでは、ファームウェア開発を簡素化するため、ワンパスプログラミングアルゴリズムを採用し、統合を容易にして市場投入にかかる時間を短縮しています。
  

マイクロンは新しいアーキテクチャで比類ないメモリ密度を達成し、コストにおけるリーダー的立場を維持
ムーアの法則が失速している現在、マイクロンの3D NANDにおけるイノベーションは、産業界において増大し続けるデータ需要に応えていく上で重要となります。マイクロンは今回のマイルストーンを達成するため、スタック型リプレースメントゲートアーキテクチャ、新しいチャージトラップ、CMOSアンダーアレイ(CuA)(4)技術を独自に組み合わせました。
マイクロンの3D NANDエキスパートチームは、マイクロンが特許を持つこのCuA技術により、急速な進歩を達成しました。これは、チップのロジックの上に多層スタックを構築、つまり狭い空間により多くのメモリセルを詰め、176層NANDのダイサイズを大幅に縮小することで、ウエハーごとの記憶容量を増やす技術です。
  
(4)CMOSは、相補型金属酸化膜半導体を表します。
    
また、これと同時にマイクロンでは、次世代NANDに向けてスケーラビリティとパフォーマンスを改善するため、NANDセル技術を従来のフローティングゲート方式からチャージトラップ方式に移行しました。このチャージトラップ技術を、シリコン層の代わりに伝導性の高い金属ワード線(5)を用いるリプレースメントゲートアーキテクチャと組み合わせることで、今回、圧倒的な3D NANDパフォーマンスを達成しました。マイクロンは、この技術を活用して、業界をリードする積極的なコスト削減策にも取り組む予定です。
  
(5)ワード線は、NANDメモリアレイにおいて各NANDメモリストレージ要素のゲートに接続しているワイヤーです。NANDメモリアレイの中から、あるメモリセルグループを選択、プログラム、消去する際に使用されます。
  
こうした最先端の技術の採用は、耐久性の向上にも大きく貢献しています。航空宇宙産業で使われるブラックボックスからビデオ監視録画まで、書き込み集中型の用途においては、耐久性が特に重要になります。モバイルストレージでは、176層NANDの交換ゲートアーキテクチャにより、混合型ワークロードのパフォーマンスが15%高速化(6)することで、超高速のエッジコンピューティングが実現します。これにより、高度なAI推論や、リッチなグラフィックを備えたマルチプレーヤー型ゲームをリアルタイムで楽しむことができます。
  
(6)96層フローティングゲートNANDを使用した、マイクロンの前世代ユニバーサルフラッシュストレージ3.1ベースのマルチチップパッケージと比較。
  

発売
マイクロンの176層トリプルレベルセル3D NANDは、マイクロンのシンガポール工場で量産され、CrucialコンシューマーSSD製品ラインなどを通じてお客様に出荷されています。マイクロンでは、2021年中にこの技術を採用した新製品をさらに投入する予定です。