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ザイリンクスとサムスン、業界初の適応型CSD(Computational Storage Drive)を提供

2020.11.13  3:23 pm

ストレージの近くで演算を可能にすることでデータ処理の速度と効率を高めた、完全にカスタマイズ可能でスケーラブルなSmartSSD CSDストレージプラットフォーム

ザイリンクス社(米国カリフォルニア州サンノゼ)とサムスン電子は11月10日(米国時間)、サムスンSmartSSD® CSD(Computational Storage Drive)を提供することを発表した。SmartSSD CSDはザイリンクスFPGAを内蔵した業界初の適応性に優れた計算用ストレージプラットフォームであり、大量のデータ処理を伴うアプリケーションに必要な性能、カスタマイズ性、およびスケーラビリティを備えている。
  
ザイリンクスは11月10~12日に開催されたFlash Memory Summit Virtual Conference and Expo(https://flashmemorysummit.com/)にてSmartSSD CSDおよびパートナーソリューションを公開した。
  
柔軟でプログラマブルなストレージプラットフォームSmartSSD CSDを使用することで、ユニークかつスケーラブルな各種アクセラレータを開発してデータセンターにおける幅広い課題を解決できる。また、ソフトウェア開発者は、使い慣れた高級言語で革新的なハードウェアアクセラレーションソリューションを簡単に構築できる。SmartSSD CSDは、データベース管理、動画処理、AIレイヤー、複雑な検索、仮想化などのアプリケーションにおけるデータ処理を10倍以上高速化する。
  
ザイリンクスのデータセンターグループマーケティング担当バイスプレジデントであるペジュ・ロシャン(Pej Roshan)は、次のように述べている。
「価値を引き出す上で鍵を握るのがデータ処理です。SmartSSD CSDの登場により、幅広い新分野の開発者がCSDの利点を活かし、データセンターが抱える困難な課題の解決に向けた強力なアプリケーションを短期間で開発できるようになります。透過的圧縮から次世代のAI推論アクセラレーションまで、開発者の想像力次第であらゆる機能をSmartSSD CSD上で実行できます」
  
サムスンセミコンダクター社のメモリセールスおよびマーケティング担当コーポレートシニアバイスプレジデントであるジム・エリオット(Jim Elliott)氏は、次のように述べている。
「業界では、SmartSSD CSDがデータセンターだけでなく幅広い分野で性能の大幅な向上に寄与することが認識されつつあります。また、ザイリンクスの最新アプリケーション開発ツールにより、アクセラレーションアプリケーションは今後飛躍的に拡充されていくものと見込んでいます」
  
SmartSSD CSDはザイリンクスのFPGAアクセラレータを搭載しており、データの近くでの高速演算を可能にすることにより、サーバーCPUによる制限を回避できる。データ移動が少なくなることで、レイテンシと消費電力が削減され、データ処理の速度と効率が向上する。SmartSSD CSDを使用すれば、サーバーを追加購入せずにデータアクセスの高速化に対するユーザーの要求に応えることができるため、CAPEXとOPEXを抑えることができる。
また、ホストCPUのリソースが解放されることで、その他のよりハイレベルなタスクの処理効率も向上する。
  
ザイリンクスの適応型プラットフォーム
SmartSSD CSDプラットフォームは、Vitis™統合ソフトウェアプラットフォームおよびアクセラレーションライブラリを活用してカスタムアプリケーションを容易に構築できるよう設計されている。開発者およびエンタープライズアプライアンスベンダーは、カスタマイズされたビルド済みアプリケーションを使用して短期間で製品を市場に投入できる。ランタイム、ライブラリ、API、およびドライバーは、C/C++やOpenCLなどの一般的な高級言語を使用してシステムに組み込むことができる。
  
また、ザイリンクスはdm-cryptを使用した高性能かつ容易に運用可能なデータ暗号化ソリューションも開始した。標準Linuxカーネルモジュールを利用することにより、開発者はVitisライブラリを使用して複数のSmartSSD CSD間で簡単に拡張可能なターンキーアクセラレーションアプリケーションを構築できる。
  
ターンキーアクセラレーションアプリケーション
ザイリンクスのエコシステムパートナー各社より、ビッグデータ分析、ビデオトランスコーディング、インストレージ検索(Search-In-Storage)などのサービスにおけるデータ処理を高速化するターンキーカスタムアプリケーションが続々と開発されている。
  
代表的なアクセラレーションソリューションには、次のものがある。

  • ビッグデータ/データ分析-SmartSSD CSDとBigstream社のハイパーアクセラレーションレイヤーを組み合わせて使用すると、Apache Spark統合分析エンジン上でビッグデータから知見を得るまでの時間を最大1/10に短縮できる。
  • インストレージ検索(Search-In-Storage)-SmartSSD CSD上でLewis Rhodes Labs (LRL)社の革新的なニューロモーフィック処理を適用すると、ペタバイト級の大規模なデータレイクから目的のデータを数分で検索できる。LRL社の確定的処理により、クエリの速度はほかのソリューションの最大100倍にまで高速化する。
  • ビデオファイルトランスコーディング-CTAccel社のビルド済みSmartSSD CSDソリューションは、高性能な画像処理によってサーバーのスループットとレイテンシを改善すると同時に、ビデオトランスコーディングのコストを最大60%削減する。
  • 透過的圧縮-Eideticom社のNoLoad NVMe CSDはストレージ容量を最大で10倍に拡張するほか、ラインレート圧縮性能の向上、CPU使用率の改善、および必要なメモリ帯域幅の緩和を可能にする。

ドライブの仕様および供給体制
SmartSSD CSDは標準の2.5インチ(U.2)フォームファクターを採用したSSDで、消費電力を25ワットに抑えることができる。物理ストレージ容量は4TBで、透過的圧縮アクセラレーションソリューションと組み合わせると12TB以上のデータを格納できる。搭載するザイリンクスKintex(R)UltraScale+™FPGAアクセラレータは、100万個を超えるシステムロジックセルと約2,000のDSP(デジタル信号処理)スライスを利用してハードウェアアクセラレーションを可能にする。
  
SmartSSD CSDは現在、事前発注が可能で、サムスン社との合意に基づき来年1月よりザイリンクスおよび正規販売代理店を通じて一般出荷を開始する。詳細は、japan.xilinx.com/smartssdを参照されたい。
  
Flash Memory Summit 2020
ザイリンクスは、バーチャルブース105においてSmartSSD CSDおよびアクセラレーションソリューションをパートナーと共同で紹介した。また、11月11日(太平洋標準時)にはザイリンクスのデータセンターグループエンジニアリング担当バイスプレジデントであるゴピ・ジャンディヤーラ(Gopi Jandhyala)が「未来の適応型データセンター(The Future Adaptable Data Center)」と題した基調講演を行った。
このイベントの詳細は、https://flashmemorysummit.com/を参照されたい。