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インフィニオンが300ミリ薄型ウエハーを使用したパワー エレクトロニクス向けチップの最先端工場を開設
2021.9.21 3:42 pm
(2021年9月17日、ミュンヘン (ドイツ))
インフィニオン テクノロジーズは、「Ready for Mission Future」を合言葉に、オーストリア フィラッハの敷地内に薄型の300ミリウエハーを使用したパワー エレクトロニクス向けチップの最先端工場を正式にオープンしました。投資額は16億ユーロで、ヨーロッパのマイクロ エレクトロニクス分野における半導体部門として、最大級の投資プロジェクトの実現となります。
フィラッハ工場は、世界で最も先進的なファブの一つであり、インフィニオンのCEOであるラインハルト プロス (Reinhard Plos)、インフィニオン オーストリアのCEOであるサビーネ ヘアリチェスカ (Sabine Herlitschka)、EUコミッショナーのティエリー ブルトン (Thierry Breton)、オーストリアの首相であるセバスティアン クルツ (Sebastian Kurz)によって開設されました。
インフィニオンは早期に長期的かつ収益性の高い成長を目指す方針を打ち出し、2018年には、パワー エレクトロニクス(省エネのためのチップ)用のチップ工場建設を発表していました。
インフィニオンのCEOであるラインハルト プロス(Reinhard Plos)は、「新しいファブはインフィニオンにとって画期的なことであり、そのオープンはお客様にとって非常に良いニュースです。パワー半導体の世界的な需要の高まりを考えると、ヨーロッパに新たな生産能力を設けるタイミングとして、今以上の時はありません。ここ数ヶ月間で、マイクロ エレクトロニクスが生活のあらゆる分野でいかに不可欠なものであるかが明らかになりました。デジタル化と電動化が加速し、パワー半導体の需要は今後も伸び続けると予想されます。今回の生産能力増強は、世界中のお客様への長期的なサービス向上につながります」 と述べています。
半導体市場の世界的な状況は、革新的なキー テクノロジーへの投資が将来のためにいかに重要かを明確に示しています。今日マイクロ エレクトロニクスは、開発、システム、技術のデジタル化を進めるうえでの根幹となる重要な技術です。インフィニオンは、生産拠点の拡大によって、欧州産業および世界市場への安定供給という重要な産業政策を推進します。
最初の製品は現在出荷中
3年間の準備と建設の後、工場は予定より3か月早く8月の初めに稼働を開始しました。 最初のウエハーは今週、フィラッハ工場から出荷されます。 これらのチップは主に自動車、データ センター、太陽光と風力の再生エネルギー生成などの最終製品に使用されます。 インフィニオングループ全体では、新工場によって年間約20億ユーロの売り上げ増加の可能性を手にします。
フィラッハで製造された半導体は、さまざまな用途に使用されます。新工場により、インフィニオンは成長を続ける電気自動車、データ センター、太陽光および風力エネルギーなどの最終製品に使用されるパワー半導体の市場にサービスを提供できるようになります。単純計算でみると、この工場における産業用半導体用の年間生産キャパシティは、合計約1,500TWhの電力を生成するソーラー システムを装備するのに十分なもので、これはドイツの年間電力消費量の約3倍に相当します。
グリーン製品のための省エネチップ
インフィニオンの製品は、長年にわたり、エネルギー効率の向上、ひいては気候保護に貢献してきました。インフィニオンのフィラッハ工場は、パワー エレクトロニクス供給の中核をなし、これらのソリューションにおいて重要な役割を果たします。これらの省エネチップは、電力をインテリジェントに切り替え、多くのアプリケーションでCO2排出量を最小限に抑えます。
また、家電製品、LED照明、モバイル機器などのエネルギー消費を削減します。例えば、最新の半導体は、冷蔵庫のエネルギー消費量を40%削減することができます。ビル照明に使われるエネルギー消費量は25%削減されます。 新しい生産施設の稼働とそこで製造される様々な製品によって、1300万トン以上のCO2排出を回避することができます。 これは、ヨーロッパに住む2,000万人以上の人々が排出するCO2の量に相当します。
高エネルギー効率工場
工場の建設においては、エネルギーバランスのさらなる改善がポイントとなりました。冷却システムの廃熱を利用したインテリジェントなリサイクルにより、敷地内の暖房需要の80%がカバーされ、将来的には年間約20,000トンのCO2を削減します。また、排気浄化システムを効果的に使い、直接排出量をほぼゼロにしています。
持続可能な生産と循環型経済の観点からのもう一つの画期的な点は、グリーン水素の生産とリサイクルです。生産工程で必要な水素は、2022年初めから再生可能なエネルギー源から直接この工場で製造されます。これにより、製造時と輸送時のCO2排出量が削減されます。
このグリーン水素は、チップ製造に使用された後にリサイクルされ、公共交通機関のバスの燃料として使用されます。このようなグリーン水素のデュアルユースは、ヨーロッパでもユニークな取り組みです。このような取り組みは、インフィニオングループが2030年までにカーボンニュートラルを達成するという目標に大きく貢献します。
欧州の2つの先進的チップ工場がメガファクトリーを形成
新チップ工場の延べ床面積は約60,000m²で、今後4~5年で徐々に生産量を増やしていく予定です。また、工場運営に必要な400名のスペシャリストのうち、3分の2以上がすでに採用されています。
このチップ工場は、世界で最も先進的な工場の一つであり、完全な自動化とデジタル化が導入されています。「学習する工場」として、主に予知保全にAI(人工知能)によるアプローチが活用されます。工場をネットワーク化することによって、多数のデータとシミュレーションを活用し、メンテナンスのタイミングを早い段階で知ることができます。
インフィニオンはさらに一歩先を見据えています。インフィニオンのマネジメントボードメンバー、チーフオペレーションズオフィサーであるヨッヘン ハネベック(Jochen Hanebeck)は、「インフィニオンは現在、ドレスデンとフィラッハの2カ所に、300ミリ薄型ウエハーを扱う大規模なパワー半導体の製造拠点を持っています。両拠点とも、同じ標準化された生産とデジタル化のコンセプトに基づいています。これにより、2つの拠点の製造オペレーションをあたかも1つの工場のようにコントロールすることができます。私たちは生産性を向上させ、顧客のためにさらなる柔軟性を生み出します。異なる製品の生産量を拠点間で素早く調整し、お客様のニーズにさらに迅速に対応できるからです。インフィニオンは、バーチャルメガファクトリーにより、300ミリ製造の新たなスタンダードを作ります。これにより、資源とエネルギーの効率をさらに高め、環境負荷をより少なくすることができます」 と述べています。
300ミリ薄型ウエハー技術とパワーエレクトロニクスのパイオニア
この工場で生産されるチップは、人間の髪の毛よりも薄い40マイクロメートルの300ミリウエハーで製造されます。フィラッハは、インフィニオングループのパワー半導体の中核であり、長年にわたり、インフィニオンの製造ネットワークにおける重要なイノベーション拠点となっています。約10年前、300ミリ薄型ウエハーでパワー半導体を製造する技術がここで開発され、ドレスデンで完全に自動化された大量生産にまで拡大されました。この技術によってウエハーの大口径化が可能になり、生産性が大幅に向上するとともに、設備投資を抑えることができます。