SOLUTION
UDトラックスとPTCジャパンが推進する3Dデータ活用の強靭な業務改革ソリューション
2022.5.13 5:40 pm
エンジニアリングチェーン、サプライチェーンのデータ連携を加速する新たなデータプラットフォーム構築で合意
商用車メーカのUDトラックス株式会社(本社:埼玉県上尾市)と、CADおよびPLMなどのソフトウェアを提供するPTCジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、以下PTC)は、UDトラックスにおけるエンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携を加速するための新たなデータプラットフォームを構築することで合意した。
PTCが提供するAR(拡張現実)ソリューションを活用し、自動設計された3D CADデータと、そこから生成されるサービス情報を一元管理、上流から保守・サービスの領域までデータ連携を可能にするプラットフォームとなる。
PTCのソリューションを活用したデータプラットフォームの概要は次のようなものだ。
・エンジンおよびボディ設計を3Dで自動設計開発
PTCの3D CADソフト『Creo』を採用。汎用性の高い機能や仕様やバリエーションをモジュールとして定義し、それを基に短時間で最適な形状(部品データ)を生成、自動アセンブリを行い、効率と生産性の高い「自動設計」を実現する。
・3Dデータをグローバルに一元管理
精巧なアセンブリとして自動設計された3Dデータや、そこから生成されるサービス情報を、製品ライフサイクル管理(PLM)ソフト『Windchill』を活用し、社内クラウドを介してグローバルに一元管理。
各グローバル拠点でも、リアルタイムにデータの閲覧や共有、データ生成や利活用ができるほか、設計データは設計部品表(EBOM)での管理に加え、サービス業務に特化した構成情報(S-BOM)へシームレスに変換され、一気通貫したデータ管理・変更管理を実現する。
・3Dデータの工場、サービス業務への活用
設計データは、ドキュメント作成から配信までサポートするソフト『Arbortext』を活用し、トラックのメンテナンスカタログやパーツカタログ、サービスマニュアル、整備手順情報などのサービス情報へと展開する。
UDトラックスは以前からArbortextの機能を活用しパーツカタログや電子マニュアルを配信、サービスに必要な部品情報と保守や修理を実行するための情報を提供している。あわせて、そうした顧客向けサービス対応の効率化に『Service Knowledge and Diagnostics(SKD)』を導入し、UDトラックスの技術サービス業務の均質化と顧客満足向上に取り組むとしている。
・AR画像表示で保守、オペレーション、コミュニケーションを向上
PTCは、世界で活用されている高機能なARコンテンツ開発ソリューション『Vuforia』を提供しているが、ここでは設計、製造、営業・アフターサービス領域に活かされる。
Creoで生成されWindchillで管理された3Dデータを素早くARコンテンツ化することで、ノウハウや技術を伝承し、グローバルに作業の効率化、品質向上を目指す。
また、正しく効率的に作業するための作業手順や指示、遠隔処理の実施や支援などもARコンテンツ化し、効率化やコスト、作業ロスの削減を進めていく。
・3DデータをつなぐIoTプラットフォーム
工場IoTプラットフォームとして『ThingWorx』を採用。世界中のデータソースを接続する機能を持つOPCサーバ製品『Kepware』を使い、プログラミングレスで設備からデータを集約、作業ラインにおけるオーダー進捗やラインスピードの見える化をダッシュボード化し生産効率化を図る。
構築するデータプラットフォームは、UDトラックスのDXを加速するものになるが、将来的にはシームレスなエンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携と双方向のコミュニケーションを実現するものとして、サプライヤーや顧客にも展開し、強靭なサプライチェーンの構築と顧客起点でのビジネスモデルの変革につなげたいとしている。
UDトラックス デジタルソリューションズ& IT 部門 統括 何 慶輝のコメント
「DXは、単にアナログなプロセスをデジタル化するだけではなく、コアビジネス、そして企業文化の変革を通じ、社会に付加価値を提供すること、つまり、全てのステークホルダーにとって 「ベターライフ(より良い暮らし)」を提供することだと考えています。今回PTCという強力なパートナーを得て、不確実性を伴う非連続的な変化へのエンジニアリングチェーンの対応力を高めるだけでなく、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携、およびさまざまなパートナーとの「共創」を通じた新たな価値創造に挑戦できることを嬉しく思います。」
PTC ジャパン 代表取締役 桑原 宏昭のコメント
「UDトラックスが、設計開発の効率化や製造サイクル短期化の追求と共に、競争優位に立つためのDX戦略として、PTCを採用頂いたことを大変嬉しく思います。 PTCは、設計開発からアフターサービスまでのシームレスなエンジニアリングデータ基盤、さらにはIoTとARを活用したフィールド支援基盤を最大限に活かし、UDトラックスのビジネスに大きく貢献していくとともに、より長期にわたって、UDトラックスのDXビジネスを共に推進していきます。」
企業変革力の強化に資するDX化への期待
DXは、製造業においてもIoTやAIとあわせ重視されてきた。昨今の新型コロナウイルス感染症におけるパンデミックや、事前に想定することができない多くの外的要因が、事業に大きな影響を及ぼすものとされ、経営環境の不確実性が高まっていることから、顧客や社会ニーズの変化への対応力強化が求められていることによる。
とはいえ、DXを推進する過程にはさまざまに障壁がある。こと製造業DXにおける課題は、人材とIT投資の2つとされる。
多く見受けられるケースとして、慢性的な人手不足、属人的改善による部分最適などがあがる。またIT投資は、これまで「旧来型基幹システムの更新や維持メンテナンス」を目的とした企業が多く、市場のニーズも激しく変動する不確実性の高い社会において求められる「業務効率化やコスト削減」を目的とした投資へのシフトが急務となっている現状がある。
そうしたなかで求められるのは、企業変革力の強化に資するDX化であり、経済産業省が発表したレポートでは、
- 競争力の源泉はエンジニアリング・チェーンの上流にシフト
- エンジニアリング・チェーンの上流を厚くすることで、設計力を強化し、設計から生産までのリードタイムを短縮。こうしたフロント・ローディングにより現場力の低下に対抗
と示し、さらにその設計能力の強化策のひとつとして、「3Dデータでの設計」をポイントにあげる。
UDトラックスとPTCによるデータプラットフォームは、まさにその3Dデータを最大限に活用する仕組みとなる。その実現には大きなインパクトを与えると同時に、デジタルファーストなビジネス構築による業界を横断した継続的な価値創造を支援する先進例との期待が高まる。
(*)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/008_02_00.pdf
・UDトラックスについて
UDトラックスは世界60カ国以上で先進的な輸送ソリューションを提供する日本の商用車メーカーです。
1935年の創立以来、「時世が求めるトラックとサービスを提供する」というビジョンを掲げ、革新的な技術の開発で業界をけん引してきました。より高い満足を求めるお客様のため、私たちは信頼性の高いソリューションにより、スマートロジスティクスの実現に向けて取り組んでいます。大型トラック「クオン(Quon)」「クエスター(Quester)」から中型トラック「コンドル(Condor)」「クローナー(Croner)」、小型トラック「カゼット(Kazet)」「クーザー(Kuzer)」までのフルラインアップ、そしてカスタマーサービスと販売金融により、世界各国の様々なお客様のニーズに対応しています。
UDトラックスはいすゞ自動車株式会社のグループ企業です。
・PTCジャパンについて
米PTCの日本法人(本社:東京都新宿区)。CAD、製品ライフサイクル管理(PLM)、IoTアプリケーション開発プラットフォーム、拡張現実(AR)オーサリングソリューションの各テクノロジーソリューションにより、製造業における顧客企業を支援。拡張性と相互運用性に優れた製品設計ソフトウェア群のCreo、製品とサービスのライフサイクル全体にわたる製品コンテンツと業務プロセス一元管理のWindchill、工学技術計算の設計と文書化を同時に行えるMathcad、IoTアプリケーション開発プラットフォームのThingWorx、拡張現実(AR)オーサリングソリューションのVuforia、産業用接続プラットフォームのKepwareといった革新的なソフトウェア製品と、製品開発業務プロセス改革コンサルティング、製品教育サービス、テクニカルサポートを提供しています。
1992年3月設立。国内4事業拠点。
Webサイト:https://www.ptc.com/ja