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APECレポート:TIの革新的な産業用設計向け製品
2017.3.30 11:57 am
フロリダ州のタンパで毎年開催されるパワー・エレクトロニクスの展示会「APEC(Applied Power Electronics Conference)」は今年で32回目となります。この記事では今回TIが自社のブースで展示した、産業用システム向けの最新リファレンス・デザインについてご紹介します。
APEC全体の傾向として、ここ10年ほどはシステム技術やサブシステムの設計の劇的な台頭と集中が目立つようになってきました。参加各社は、システム設計の専門知識をベースに、サブシステムレベルで、パワーICやテクノロジの素晴らしい組み合わせを使い、顧客の問題の解決に役立てています。技術者達は、アプリケーションを向上することを目的に、地球上で最新のトポロジと材料を活用した新しいアイディアを次々と考え出します。彼らは包括的なサブシステムレベルのリファレンス・デザインを構築して、世紀の変わり目の時点では不可能だった、高効率と高電力密度の目標を追求しています。
すぐに使用可能な産業向けや車載の電源システム向けのリファレンス・デザインを、より洗練された手法で提供しているメーカーは複数ありますが、今回、TIが展示した産業用システム向けの最新リファレンス・デザインは特に注目を集める内容です。
ACからプロセッサまで、GaN半導体をベースとした電源システムの設計: 業界初のエンド・ツー・エンドの高周波GaN(窒化ガリウム)電源ソリューションは、実装面積の制約を持つ産業用、通信用やネットワーキングなどのアプリケーション向けに、AC電源からの電力をPOL(point-of-load)で供給します。TIは、『LMG5200』 80V 10A 統合GaN FETと『LMG3410』 高電圧GaNパワー・ステージ・ソリューションをベースとして、既存のソリューションの3倍の電力密度を可能にする、4種類の個別のリファレンス・デザインを展示しました。詳細についてはブログ記事「GaN半導体で電力密度を再検討」(英語)を参照ください。
エネルギー・ストレージ向けの480W双方向パワー・コンバータ: 新しい「480W、効率97% の超小型 (480W/立方インチ) 双方向DC/DC」リファレンス・デザイン(TIDA-00705)は、LES(ローカル・エネルギー・ストレージ)や、特にサーバー電源ユニット用のリチウム・バッテリによるバックアップ電源のアプリケーション向けに480W/立方インチの電力密度と97パーセントの変換効率を提供可能です。この、サイズが1インチ×1インチ×1インチ(25.4mm×25.4mm×25.4mm)のリファレンス・デザインでは、TIの『UCD3138A』デジタル・パワー・コントローラで二相インターリーブ・ハーフブリッジ・パワー・ステージを制御します。
スマート・ビルディング向けの産業用LED照明PoE: TIのPoE(Power over Ethernet)アプリケーションの専門知識を拡張する、IEEE 802.3bt標準規格に準拠したPoE対応のLED照明向けバラスト・ソリューション (51W Class 6) は、スタンバイ時の超低消費電力、Ethernet経由のコネクテッド照明制御やモーション検出機能などを展示しました。このリファレンス・デザインは、エネルギー管理、音や動きに反応する室内照明、案内路確認や警告/警報システムをはじめとした、産業用オートメーション向けのIoT(モノのインターネット)の製品設計で、Ethernet経由でのLEDバラストの知的な管理が可能です。
スマート・サーモスタット24VAC電力ステージ: 「スマート・サーモスタット向けの広入力電圧範囲のコンバータと電池残量計付きの24VACパワー・ステージ」リファレンス・デザイン(TIDA-01395)は、スマホからも制御可能なWi-Fi対応のスマート・サーモスタットへの電源とバックアップ機能を提供します。サーモスタットを希望する温度に設定することで、照明を適正に発光させ、冷房中か暖房中かを表示します。この電源は24VAC入力から5Vと3.3Vの出力レールを提供します。新型の最大入力電圧65Vの『LM5166』同期整流降圧型コンバータを搭載し、HVAC(暖冷房空調)システムの設計に役立つ過渡波形への耐性を提供し、さらに10μA未満の無信号時電流特性で、最大限の軽負荷時の効率を実現します。このリファレンス・デザインは、リチウム・ポリマ・バッテリの充電機能と、24V AC電源の停電時にバックアップ・バッテリ電力への切れ目のない切り換え機能を提供します。
非軍事用のドローン/ロボット向けバッテリ管理: RC 2S1P バッテリ管理の展示では、インタラクティブなGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)で、ドローンのバッテリの充電状態、放電までの残り時間や健康状態をはじめとしたバッテリ情報をリアルタイムでモニタ表示しました。ロータの回転速度を上下させてバッテリの電流/電圧プロファイルを確認が可能です。この「ドローン、ロボット、RC 2S1P バッテリ管理ソリューション」リファレンス・デザイン(TIDA-00982)は、クワッドコプターその他の非軍事用の民生向けや産業向けのドローン製品の飛行時間の延長や電池寿命の延長を提供します。
BLDCモータ・ドライブ製品の起動/停止効果: このライブ展示では、最小4.4Vのコールド・クランク電圧で動作する業界初の車載用BLDC(ブラシレスDC)向けゲート・ドライバを説明しました。『DRV8305-Q1』 ゲート・ドライバは、低電圧状態でも、ポンプで液体を圧送することが可能です。「BLDCモータ・ドライバ、オートモーティブHVACブロワ用」(TIDA-00901)は車載アプリケーションの12V 200W (20A) BLDCモータ・ドライブ向けリファレンス・デザインです。
12V-48V双方向電源バランス・システム: 『LM5170-Q1』リファレンス・デザインの展示では、この新型コントローラで、48Vから12Vへの降圧モードと、12Vから48Vへの昇圧モードの動作を説明しました。このコントローラは、電流方向のダイナミックな変化に対応して、オーバーシュートなしで滑らかな動作を提供します。この動作によって、方向入力の変更中でも各相の連続的な動作を可能にすることから、あらゆる入力信号のシーケンス制御を簡素化するとともに、降圧モードと昇圧モードの滑らかな遷移が可能です。
データ信号と電源の両方の絶縁機能を集積した産業用システム: この展示では、新製品で電源内蔵の『ISOW7841』強化絶縁アイソレータと、市場で入手可能な同種のデバイスの発熱特性を比較しました。『ISOW7841』は既存の集積デバイスと比較して80パーセント高い効率を提供します。このアイソレータは低消費電力で、その他の集積ソリューションと比較して、デバイス動作温度を最大40℃低減し、より高電力の供給、より高いチャネル数やシステム寿命の延長を実現します。
高効率のUSB-Type C™ 充電: 数種類のUSB Type-C 充電リファレンス・デザインは、高いスイッチング周波数、低いEMI(電磁妨害)、低い無信号時電流や広い入力電圧範囲などの、重要な特長を備え、次のようなUSB Type-C リファレンス・デザインを提供します。
-「2-3セル・バッテリ入力パワーバンク付きUSB Type-C PD DFP 5/12/20V3A 出力」リファレンス・デザイン(PMP40001)
-「USB 3.0 DataをサポートするCISPR 25 Class 5 USB Type-Cポート」リファレンス・デザイン(TIDA-00987)
-「USB-C DFP 5V3A 自動車用チャージャ」リファレンス・デザイン(PMP11594)
-ポート電源管理DC/DCチャージャ付きの「36W USB デュアルポートUSB Type-C PD」リファレンス・デザイン(PMP20172)
-「USB Type-C およびPDマルチポート・アダプタ」リファレンス・デザイン(TIDA-03027)
60kW DC EV 高速充電ステーション: Xuji社の60kW充電ステーションは、2020年までに中国全土に展開される予定の400万件のEV(電気自動車)用充電ステーションの1つで、1カ所の充電ステーションは8個の7.5kWパワー・モジュールで構成され、それぞれのパワー・モジュールは2個の『C2000™ Piccolo™ F2803x』デバイスを搭載します。HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)にはTIプロセッサを搭載、またTIの高電圧センシング部品や高電圧ゲート・ドライバを使い、効率の向上や高精度のセンシング機能を提供します。この充電ステーションは、C2000マイコンを搭載したTIの新しい「Vienna 整流器をベースとした三相パワー・ファクタ補正」リファレンス・デザイン(TIDM-1000)を活用し、充電ステーション内でバッテリとの間の電力変換をモニタし変換効率を向上することで、最小限のエネルギー損失を提供します。
APECにおけるTIの情報はこちらからもご覧いただけます。
参考情報
•ホワイトペーパー:“Evolving high-voltage power delivery through the power process chain”
•ウェブページ:TIリファレンス・デザイン
※その他すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年3月27日)より翻訳転載されました。
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日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
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