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2017年の技術革新を牽引する4つの技術トレンド
2017.3.27 2:08 pm
電子化の波が高まり、エレクトロニクスは生活環境のあらゆる場面で利用されています。私たちを取り巻くあらゆるものが、より賢く、より多くつながるようになることは、すなわち、世の中にいかに多くの半導体搭載製品が溢れているかを表しています。
ビッグ・データはますます巨大化し、パーソナル・エレクトロニクスはますますパーソナル化し、スマート機器はよりスマート化しています。2017年には、次に述べる技術トレンドが技術革新の方向性を決めるであろうと考えています。これらのトレンドの中には、前年から持ち越されたものもありますが、2017年にも普及を続け、ますます重要な技術となっていくでしょう。
1. 高電圧
高電圧分野が成長している一つの理由は、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HEV)の普及です。多くの大手自動車メーカは、EVもHEVも積極的に開発しています。そしてクルマの駆動部や充電ステーションに対するニーズは、高電圧のパワー・エレクトロニクスの成長を加速するでしょう。
また、5G対応デバイスの開発と普及によって、さらに堅固なデータ・センターに電力を提供するためにも高電圧パワーが必要になるでしょう。これについては、後述のスマート・ビルやスマート・シティのパートで詳しく説明します。高電圧パワーを必要とするスマートな急速充電器のようなオフラインのアプリケーションは、健全な成長の兆しを示すでしょう。
従来のパワー・デバイスは成長し続けるでしょう。GaN(窒化ガリウム)やSiC(シリコンカーバイド)のような先端的なパワー・デバイスは、より高いパワー密度をより小さい実装面積で実現することで、低価格化が進み、それによって有望な市場機会が生まれてくるでしょう。
2. 半自律システム
自動車産業は、民生市場と同様の速いペースで、最新の電子機能を受け入れています。特筆すべき点は、クルマに搭載されている半導体のコンテンツの伸びが2010年以来、自動車市場の成長を上回って伸び続けていることです。しかし、より高い信頼性とより長い寿命を求めるクルマ品質の標準規格によって、次世代自動車の技術革新は、新たな技術的問題と市場性の両方を促進してきました。新しい複雑なADAS(先進運転支援システム)は、自動運転に向けて多数のカメラやレーダー、LIDAR(ライダー)、超音波センサを使います。加えて、EV/HEV市場は、パワー・エレクトロニクスの技術革新を牽引し、期待された成長を示してきましたが、市場全体から見るとその規模はまだ小さいです。
今年、成長すると見られるもう一つの半自律システムは、ロボットです。従来、ロボットは決まった作業を行うアプリケーションや精密性を求められるアプリケーションなどの産業用途で使われてきました。ロボットは、今や企業や教育、民生市場、作業者の隣で働くアセンブリ・ラインにおいて役割を見出されています。先進の制御技術が、高性能モータ駆動とセンサと共に、現在版ロボットで広く使われるでしょう。
ドローンもまた、業務用アプリケーションの広がりを見せるでしょう。セキュリティやエンターテインメント、調査サービスでのアプリケーションが今年、成長するでしょう。多くの重要なアプリケーションにおいて、先進的なセンサ・システムや飛行時間の改善が実現されるようになるでしょう。
3. スマート・ビルとスマート・シティ
スマート・ビルディングやスマート・シティはインダストリアル・インターネット技術を、残りのインダストリ4.0よりも、さらに速いペースで採用しています。より多くの商業ビルや工業ビルは、セキュリティや設備のモニタリング、水質や空気の管理などのためにセンサ・ネットワークを使っています。
世界的に都市化が加速する中、高い人口密度の大都市において、エネルギー効率を上げ、交通品質を改善し、さらに優れた水道システムや設備の管理を確実に行えるようにすることは大きな課題です。都市もまた、よりインテリジェントなユティリティ・モニタリングと制御、セキュリティ・システム、より高速にモニタリングするスマートな設備を使っています。
ビッグ・データが増加し続けるにつれ、データの需要は有線/無線とも急激に伸びています。ビデオはネットワークにおけるデータ・トラフィックの60%を占めます。そしてモバイル・データは、15カ月ごとに2倍のペースで増加しています(シスコ社ビジュアル・ネットワーキング指数:グローバル・モバイル・データ・トラフィックの予想アップデート、2016-2021)。ビルや工場のフロア、車内や公共交通に関連する大量のデータを処理し移動させるニーズが、技術の多くの側面を限界まで押し上げていきます。ワイヤレス・ネットワークのデータの爆発的な増加は、5G無線インフラストラクチャの開発を促進しています。
データ・センターもまた、急速に拡大しています。このトレンドが意味する要素には、最大100 Gbpsの超高速インターフェイスや先進的なパワー・マネージメント、集積化された無線ユニットが含まれます。データ解析はリアルタイムで行うことが多く、多くのアプリケーションで重要で、しかも新しいプロセッサ・アーキテクチャを進化させてきました。組み込みプロセッサやGPU向けのマシン・ラーニング(機械学習)のアクセラレータは、AI(人工知能)用の特殊なハードウエア機能と共に、多くの新しいアプリケーションで使われます。
4. パーソナル・エレクトロニクス
パーソナル・エレクトロニクスの急速な成長は、半導体搭載製品の増加および機能の差別化を牽引します。新たに開発されるパーソナル・デバイスの多くは、徐々に高機能化し、自動車および産業市場にも普及していくでしょう。
身の周りのデバイスは、これまでよりも一層強力になり、いたる所で活用されるようになります。このため、マシンとのやり取りの頻度が上がり、進化しています。タッチ機能は、主要なHMI(ヒューマン-マシン・インターフェイス)になる一方で、音声、視覚、ジェスチャーを活用するより自然なアプローチが急速に進んでいます。音声インターフェイスは、多くの民生アプリケーションや自動車アプリケーションにおいて、ますます信頼性が高く、低コストな技術になってきています。エンターテイメントやゲーム向けに始まったVR/AR(仮想現実/拡張現実)は、フライト・シミュレーションのような多くの産業用アプリケーションで進化しています。フレキシブル・エレクトロニクスおよびディスプレイは、モバイルと医療機器でのアプリケーションとして利用されつつあります。
今後のコラムで、各トレンドにおける技術的な課題と、半導体がそれらの技術をどのように促進していくのかについて一つ一つを深く掘り下げて行きますので、引き続きご注目ください。
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※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年2月22日)より翻訳転載されました。
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